プロジェクト概要

IMAGICA GROUPは、グループ各社が持つクリエイティブと最先端のテクノロジーをさまざまな形で掛け合わせ、新しい映像技術を活用した取り組み・実証実験にも注力しております。
近年、映像体験は単なる視覚的な刺激を超え、より深い没入感や体験型コンテンツが求められる時代へと進化しています。IMAGICA GROUPでもVR技術を活用した新たな映像制作の可能性を追求してきました。
このような背景のもと、2022年に立ち上げたのが「SPACE JOURNEY TO THE EARTH」の実証実験プロジェクトです。地上から成層圏に突入し地球を観測するまでの実際の映像をお楽しみいただける高精細・没入型VRコンテンツとして、2つのプロトタイプの制作を重ねてきました。スペースバルーンを用いて地上からカメラを放球し、成層圏に到達したカメラが地球の姿を360度捉えたものです。この映像を高解像度のVRコンテンツとして仕上げ、視聴者はまるで宇宙旅行をしているかのような視点で地球を見下ろす体験ができます。
真冬のモンゴルを舞台に本プロジェクト3度目の実証実験を実施しましたので、その舞台裏をご紹介いたします。
SPACE JOURNEY
TO THE EARTHとは

『SPACE JOURNEY TO THE EARTH』は、スペースバルーンを用いて地上から放球し、成層圏まで到達したカメラが地球の姿を実写で撮影し、VRとして体験できる映像コンテンツです。
視聴者は、まるで宇宙飛行士のように地球を俯瞰する視点で映像を楽しむことができ、これまでにない没入感と感動を提供します。

これまでの課題
過去2度の実証実験を経て、体験価値向上
のために3つの課題を挙げていました。

映像品質の
最大化成層圏での撮影では光量が大きく変化し、従来のカメラではダイナミックレンジの不足により細部が失われる課題があり、より高精細な映像を得るには、センサーサイズやビットレートの高いカメラボディが必要でした。

撮影時に生じる
揺れの軽減成層圏では気流の影響が大きいためカメラが安定せず、収録映像にブレが多数発生する問題がありました。これを軽減するためのより強固なリグ設計が必要でした。

音・ハプティックなど
4D要素の追加VR体験の没入感をさらに高めるために、立体音響やハプティックの活用を検討中です。
今回の3度目の実証実験では、
「① 映像品質の最大化」と「② 撮影時の揺れの軽減」に焦点をあて、改善に取り組みました。
キヤノン株式会社との連携
IMAGICA GROUPとキヤノンの連携は、「宇宙旅行という未知の体験をVRで再現し、多くの人に届けたい」という共通の想いから生まれました。本プロジェクトは、IMAGICA GROUPがこれまで培ってきた映像制作技術と、キヤノンの最先端のイメージング技術が融合することで実現しました。
当社が目指したのは、単なるVR映像ではなく、『肉眼で見る地球の姿に限りなく近いリアルな映像』の実現でした。しかし、従来のVRカメラではデータが圧縮され、地球表面の細部が潰れてしまうという問題が発生。これを解決するため、キヤノン社に相談し、成層圏撮影に最適な機材の選定を進めました。
最終的に採用したのは、「EOS R5 C」と「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」のレンズを組み合わせたシステムです。この組み合わせにより、3D VR映像にもチャレンジできることとなり、3度目の実証実験でよりハイレベルな取り組みとなりました。
機材について
撮影には、キヤノン「EOS R5 C」と「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」レンズを採用。
EOS R5 C

8K60P RAW撮影が可能で、フルサイズ
CMOSセンサーを搭載。高精細な映像を収録可能
- フルサイズセンサーの広いダイナミックレンジで、成層圏特有の明暗差の激しい環境下でも細部まで鮮明に記録
- 8K RAW撮影により、データ圧縮による情報の欠落を防ぎ、よりリアルな地球の姿を再現
RF5.2mm F2.8 L DUAL
FISHEYE

190度の画角を持ち、3台を組み合わせて360度の撮影を実現
- デュアルレンズ設計により、単一カメラで3D VR映像を撮影可能
- キヤノンの光学技術により画面周辺まで高画質
- 逆光時のゴースト抑制
実証実験

事前検証
成層圏での撮影に向けて、IMAGICA GROUPは事前に恒温槽試験とポストプロダクション作業の事前検証を実施。何カ月にも渡り、調査・検討・検証を行ってきました。
恒温槽試験
-50℃の環境下で2時間の連続撮影テストを実施し、気圧変化や温度変化によるカメラボディとバッテリーの外部給電も検証

専用リグ開発
3台のEOS R5 Cを固定し、成層圏での揺れや振動に耐える、飛行高度を高める軽量なリグを設計

ポストプロダクションワークフロー
カメラ3台分(360°)の3D VR映像を自然に合成するためのステッチング編集とスタビライズ作業のフローを確立


2024年2月某日早朝。風速や天候の最終確認を終え、いよいよ打ち上げが実施されました。スペースバルーンは順調に上昇を開始し、カメラシステムは想定通り撮影を開始。打ち上げ後のリアルタイムモニタリングでは、安定した映像データが取得されていることが確認されました。バルーンは上昇を続け、約25,000mの成層圏に到達。宇宙と地球の境界線が見える高度まで達し、8K 3D 360° VR映像として地球の丸みがリアルに記録されました。特に、朝日が地球を照らす瞬間や、白い地球のグラデーションが広がる様子は、想像以上に美しい映像として捉えられました。

高度約25,000mに達したバルーンは、予定通り膨張限界を迎え破裂。パラシュートが展開し、カメラシステムは徐々に降下を開始しました。しかし、強風の影響で予定していた着地点より約20km離れた雪原に落下。回収班はGPS信号を頼りに、車両での接近が困難な地点まで移動し、最終的には徒歩での捜索を行いました。
雪深い中、約2時間の捜索の末、無事にカメラを発見。映像データが正常に保存されていることを確認しました。

GPSによる放球班(紫)と回収班(緑)、
カメラGPS(橙)の追跡情報

成層圏からの8K 3D 360°VR映像という新たな映像体験の実現に成功し、リアルな地球の姿を忠実に撮影することができました。IMAGICA GROUPの技術力とキヤノンのイメージング技術が融合し、これまでにない高精細なVR映像が収録できたのです。
また、本番撮影を通じて、低温環境下での機材運用やスペースバルーン撮影の最適な運用方法についての知見を蓄積し、今後のさらなる発展に向けた貴重な経験とデータを得ることができました。本プロジェクトの成功は、VR映像の新たな領域を切り拓くものであり、大きな一歩となりました。
画像比較
過去の収録映像と比較すると、細部の解像感や色味の表現力が飛躍的に向上し、高い映像品質での撮影が実現しました。
極寒のモンゴルの大地から朝日を浴びながら空へ飛び立ち、モンゴル縦貫鉄道を下に見ながら、真っ白な地平線が広がる。約25,000mの成層圏では白い地球を高画質で雪の中の山や川などの細部がはっきりと視認でき、より美しい映像になっています。
今回の収録映像

過去の収録映像

撮影協力グループ企業
本プロジェクトの実現にあたり、各グループ企業が専門性を活かし連携しながら実証実験を行いました。 映像制作、撮影技術、リグ開発など、各分野のエキスパートが協力し、より高精細で没入感のあるVRコンテンツの開発を実現しました。

演出・制作進行:
株式会社IMAGICA EEX
いつの時代でも、誰かの心と身体を動かすのは、驚きと感動だ。
社会やパートナーの課題を解決するために、ユーザーに寄り添い、アイデアを考え、カタチにして検証し、最適な答えを探し出す。そして、リアルとバーチャルを融合させることで「驚きと感動」の体験を創り出す、エクスペリエンス・デザインカンパニーです。

テクニカルコーディネート:
株式会社IMAGICAコスモスペース
IMAGICAコスモスペースは、1979年に設立した「制作」「技術」が一体となった総合映像制作プロダクションです。制作事業では設立時のテレビCM制作を皮切りに、現在ではイマーシブ体験型イベントの企画プロデュースや大型展示映像・企業プロモーションなど多岐にわたる領域で事業を展開しています。

撮影リグ制作(撮影技術サポート):
株式会社フォトロン
画像(処理)領域に特化して最高品質のハードウェアとソフトウェアを開発し、お客様の業務フローに最適な製品群を先進のシステムとしてまとめ上げ、付加価値の高いご提案とご導入支援・運用サポートをしている企業です。
Niche But Top(ニッチな市場でのNo.1 企業)を掲げ、顧客満足による信頼の創造という基本理念のもと、画像処理技術のフロントランナーとして”世の中初の製品”づくりへの挑戦とグローバル展開を目指しています。
今後の展望
IMAGICA GROUPは映像業界における革新的な研究開発と、新たなハイエンドコンテンツの領域を切り拓くことを目的として、これまでにない、更なるVR技術を活用した新たな映像体験を追求し、スポーツやエンターテインメント分野、文化芸術などでの展開を見据え、さらなるコンテンツ開発を進めてまいります。



当社グループでは、最先端技術を活用した未来型のVR体験を数多くご提案しています。
これからも
「世界の人々に“驚きと感動”を与える映像コミュニケーショングループ」を
目指してまいります。
